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12月04日
2009年
posted by 石丸 臣一 at 6:15 PM
先生!

なにかな?

先生の研究室では、燃料電池の材料も研究してらっしゃるんでしたよね?

ああ、といっても電解質の部分だけで燃料電池そのものの研究ではないけどね

電解質・・・
なんか化学の授業でやったような気もするな?

おいおい、『やったような気もするな』は頼りないなぁ。高校の化学でも一応やってる内容なんだからしっかりしてくれよ。

しまった、やぶ蛇だ!

もう、余計なこと言うから・・・
えーと、そのお話は次の機会にお願いするとして、今日は燃料電池の燃料となる水素についてお聞きしたいんです。

うーん、電解質の話も重要なんだけどなぁ・・・
まあ、いい。で、聞きたいことって何かな?

はい、燃料にする水素ってどうやって作るですか?

馬鹿だなぁ。そんなの先生に聞かなくたってわかるよ。水を電気分解すればいいのさ!

なによ、馬鹿って!!
水を電気分解して作るんだったらその電気はどこから持ってくるのよ!?
最初から使える電力があるんだったら、わざわざ一旦水素にして燃料電池でまた発電するなんてナンセンスじゃない。

えーと、えーと、それはそのぉ・・・
先生~

まあ、まあ、そう興奮しなさんな。君もそんな情けない声出さない。

どちらも言い分としては正しいよ。他の方法で作った電力を使って水素を作る場合、どうしてもエネルギーのロスが出る。利用可能な水素のエネルギーはもとの電力よりも必ず減ってしまうんだ。熱力学の第二法則だね。

ネツリキガクノダイニホウソク・・・・?

うーん。これも物理化学の授業でやってる内容なんだけどなぁ。1年生や高校生の諸君にはちょっと耳慣れない単語かも知れないね。

先生、ここには僕たちしか居ませんよ?誰に向かって話しかけてるんですか?

ん?いやいや、こっちのこと。気にしなさんな。まあ、熱力学の話もどこか他のところで話をするとしよう。
とにかく、電力を使って電気分解を行なえば、回路の抵抗なんかでロスしてしまってエネルギーとしては損をしてしまうって話だよ。

ほーら、ごらんなさい。

でもね、現在のところやっぱり水素は主に電気分解で作ってるんだ

えー?じゃ、電力の無駄遣いじゃないですか。

いや、そうとも言えないよ。電気って言うのは電気のままではほとんど溜めておくことはできないんだ。火力発電所の場合には燃料の供給を止めればすぐに発電も止まるから、工場の操業が終わって、みんなが寝静まって電力をあまり必要としなくなる夜間は止めちゃえば良いんだけど、原子力や水力発電の一部は昼間と同じように発電し続けている。この余った電力はそのままでは全部無駄になってしまうんだよ。だから、大きなダムを使った水力発電所では、夜間他の発電所で余った電力を使って流した水をまたダムに汲み上げたりもしてるんだ。

その他の有効な方法と考えられるのが、余った電力を化学的なエネルギーとして貯える方法だ。水素は豊富に存在する水を電気分解するだけで手に入るから、エネルギーの貯蔵法としては絶好の物質と言えるんだよ。

ほーら、みなよ。

(≧ヘ≦) ムッ

まあまあ(汗)

・・・

で、実際に実用化はされているんですか?

実用化とまでは行かないけどね、例えば我が国では屋久島ゼロエミッション・プロジェクトがもっとも実用的な試行例と言えるだろう。

なんですか、ゼロエミッションプロジェクトって???

まず、屋久島は知ってるよね?

えーと、聞いたこと有るような無いような・・・

おいおい、理科ばっかりできても駄目だよ。一般常識も身につけないとね。屋久島は鹿児島南部、種子島の南西にある島で縄文杉で有名じゃないか。世界自然遺産にも指定されてるぞ。面積504.88km2で、日本でも9番目(本州、北海道、九州、四国を除き、択捉島、国後島を含む)の大きさを持つ島の中に、九州地方最高峰の宮之浦岳 (1,936m) があり、他にも1,000m級の山々がそびえてるという特異な地形をしている。しかも、海上は亜熱帯性の温暖湿潤な気候のため、湿気を多く含んだ風が山にぶつかって多量の雨を降らせるので、日本有数の降雨量を誇っているんだ。俗に『屋久島は一ヶ月のうち35日雨が降る』なんて言われているんだよ。

へー。

急峻な山に降った雨は急流となって海に注ぐ。ダムを使った大規模な水力発電には向かないけれど、小型の水力発電施設をたくさん作ることができる。しかも、屋久島には大きな電力を必要とする大工場もないし、口永良部島を合わせた屋久島町全体の人口で1万3千5百人ほどなので十分な発電量が確保されてるんだ。水力発電だけですべての電力が賄える土地なんだよ。

すごいですね。火力も原子力も必要ないんだ。豊かな自然が残されているわけですね!

うん。あとは一番の大気汚染の原因は車の排気ガスってことになる。そこで、本田技研鹿児島大学屋久島電工の三者が協力して、2004年から2年間の計画で余った電力を使って水の電気分解を行ない、発生させた水素を使ってホンダの燃料電池車『FCX』を走らせるというプロジェクトを立ち上げたんだ。これが屋久島ゼロエミッションプロジェクトだよ。『エミッション』とは、『排出』の意味で、発電所からも車からも有害な排出物が生まれないクリーンな循環システムを作り出そうという計画なんだ

ワンダフル!

実際にどのくらいのエネルギーが水素に変換できるんですか?

(アレ?無視ですか?・・・)

そうだね、このプロジェクトで得られた最終的な効率としては、投入した全電力の22%を水素のもつエネルギーとして得ることができたそうだ。

うーん。使った電力の5分の1ですか・・・。もっと効率を上げられないんですか?

そうだね。屋久島の例では水素ステーションが小規模だったことや、電気分解に用いた装置の効率があまりよくない安いものだったのもあって効率が悪いんだけど、今の技術では良くてもせいぜい50%程度の効率しか引き出せないらしいね。

じゃあ、残りの電力は無駄になっちゃうじゃないですか。

まあ、無駄とは言い切れないんだよ。最初に言ったとおり電気はそのままの形で貯蔵は出来ない。だからもともと余って無駄になっていた夜間電力を利用して水素を製造することを考えれば、無駄に消費されていた電力のうちの半分は取り返せることになる。特に水力などのクリーンなエネルギーが豊富にある地域では有効な活用手段じゃないかな。それを利用して他の地域の火力発電所を減らすことも考えられるしね。

北海道の風力発電なんかも良さそうですね!

そうだね。風力発電は主に民間企業や自治体が設置していて、余った電力を電力会社に売ることでコスト削減を行なってるんだけど、電力会社が買いしぶったり、買い取り単価を引き下げたりしているのが現状で、なかなかうまくいってないんだ。水素の形で貯蔵すればもしかしたらもっと有効利用できるかもしれないね。

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カテゴリ 化学講座, 環境科学講座

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