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06月07日
2010年
posted by admin6 at 5:09 PM
前回は、植物を使って環境を浄化する話を紹介しました。

はい。ヒ素を蓄積するシダって面白いですね。

重金属を蓄積する植物って、どこにでも生えているんですか?



“重金属蓄積植物が生えているのは、重金属で汚染されている土壌”ってわけではないので、注意してね。でも、どちらかといえば、重金属濃度が高いところで見つかる場合が多いかもしれませんね。
たとえば、銅を蓄積するホンモンジゴケ(写真)は、東京都大田区の池上本門寺の境内で最初に発見されたの。銅葺き屋根の軒下に生息して、雨水に溶けて滴り落ちてきた銅を体内において高濃度に蓄積していたのよ。他の植物が育ちにくい環境で生長するという意味では、植物の戦略ともいえるわね。ホンモンジゴケが最初に見つけられたのは1910年だから、<>今年(2010年)はちょうど発見100周年ね!

ホンモンジゴケ


お寺以外にはありますか?

ホンモンジゴケは、銅山採掘跡地の銅を含んだ水の流れる場所近くあたりにも生えていることがあります。
日本は火山国だし、小さな鉱床が点在しているので、場所によっては重金属濃度が高いところもあるのよ。また地質が複雑に入り組んでいるという特徴を持っているの。

そういえば、この間行った温泉でみた成分表には、「鉄(II)イオン(Fe2+) 7 mg/kg、アルミニウムイオン(Al3+) 48 mg/kg、総ヒ素 9.7 mg/kg」なんて表示がありました。その他にもいろいろな成分の表示があったわ。源泉の分析値だったと思うけど。

それって、どのくらい高いの?

水道水質基準を調べたら、鉄は0.3 mg/L以下、アルミニウムは0.2 mg/L以下、ヒ素は0.01 mg/L以下、となっていたの。水道水質基準と比べると温泉水って、すごくない?
私たちが行った温泉はpHが低くて、特に含有成分が多いっていう特徴を持っていたみたい。
なんか体によさそうでしょ!私たちは温泉を満喫しました~。

いいわねー(笑)。
場所によるけど、温泉には比較的重金属濃度が高いのもあるわ。
さて、こんな風に「重金属濃度が高い」という場合、温泉や鉱床のような自然由来なのか、産業活動や人間生活といった人為的な汚染なのか判断することが必要な場合もあります。
どうしたらいいと思う?

うーん。汚染される前に、あらかじめ調べておく・・・んですか?

だけど全国を調べるなんて大変だ!そんなことできる?

・・・。

そうね。全国のどこにどんな元素がどのくらい存在するのか、全部を網羅的に調べることは途方もない仕事に思えるわね。
実は、産業技術総合研究所(産総研)地質調査総合センターでは、全国から採取した川砂約3000個の試料を分析することで、元素の地図、つまり地球化学図を完成させています。1999年から5年計画で全国地球化学図の作成に取り掛かり、解析したデータは「日本の地球化学図-元素の分布から何が分かるか?-」として2004年度に書籍として出版されました。またwebでもデータが公表されています。2010年には、沿岸海水のデータを加えた「海と陸の地球化学図」も刊行されているわ。
(http://riodb02.ibase.aist.go.jp/geochemmap/index.htm)

すごーい。

こういう「元素の地図」は、古くは金属資源の鉱床探査にも利用されていたの。最近では、さっき言っていた環境汚染を評価するための基準値(バックグラウンド)としても利用するという目的もあるわ。
全国のヒ素の分布(図)を見てみましょう。
各地に存在する鉱床に密接に関連があって、大規模な鉱山のあった地域で高い濃度を示しているのがわかるわね。

日本全国のヒ素の濃度分布


私の住んでいるところは大丈夫かしら。心配になっちゃう!

大丈夫よ(笑)。元素の濃度を相対的な色で表してあるので、“相対的に”高くても人体に悪影響を及ぼすような高濃度とは限らないのよ。だから「家が汚染されている!」と大騒ぎすることはないから安心して。川砂を食べるわけじゃないし(笑)。

他にはどんな元素がありますか?

測定しているのは約50元素ね。

すごい数。だけど周期表の下の方の元素って、あまり馴染みがないなあ。

高校ではあまり習わないし、受験には関係ないから覚えなくてもいいですか?

あらあら。だけど、先端技術のための材料開発では、周期表の下の方の元素(重元素)が重要な役割をしている場合が多いのよ。
たとえば、タングステン(W)がないと、ものを作るための工具(超硬工具)がつくれません。ニッケル(Ni)モリブデン(Mo)がないと、ステンレス製品が作れなくなります。ガリウム(Ga)などがなくなると、半導体が作れません。つまりコンピュータも携帯電話も作れないの。インジウム(In)がないと液晶モニターが作れないわ。
こういう先端技術を支える元素の中で、産出量が少なかったり、取り出すのに非常に手間がかかる金属元素を「レアメタル」といいます。
もともと日本はそういった資源が豊富な国ではありません。レアメタルも、そのほとんどを外国に頼っているために、万が一輸入がストップすると大変なことになるのよ。

ええー、そうなんですか。

最近、新興国や途上国では、資源の囲い込みの動きが広がっているの。中国では希土類などの輸出関税を引き上げたのよ。これは自国の資源を保護し、ハイテク産業を発達させるための国家的な戦略ね。また、インドネシアは日本のニッケル鉱石の全輸入量の約55%を占めるんだけど、最近、新鉱業法を施行して、希少金属(レアメタル)などの鉱物を採掘する外国企業に対して、加工や精製などを国内で実施するよう義務付けたのよ。
こういう資源ナショナリズムが高まるにつれて、電子機器などの生産に必要な資源の確保が困難になってきているというのが現状なのよ。

レアメタルが足りなくて、携帯電話が使えなくなるのは、困る~~。

今まで知らなかっただけで、僕たちの生活にはとても重要な元素なんですね。“受験に関係ない”なんて言ってられないなあ。

そうそう。
鉱物資源に乏しい日本で、高度な部材や部品で産業を発達させていくためには、レアメタルの安定的な供給を確保する必要があるわ。とても重要視されているのよ。

さっき、重元素には馴染みがないといっていたけど、文部科学省では多くの人に化学に親しんでもらうために、「一家に一枚 周期表」を作製しているの。ビジュアルをたくさん取り入れてあるので、普通の周期表よりは親しみが持てるし、見ていると興味がわいてくると思うわ。元素ごとに用途も記載してあります。この周期表は、Webからダウンロードできるのよ。
(http://stw.mext.go.jp/shuki20090429/a3.pdf)

面白そうだ。さっそくダウンロードしてみようっと。

興味を持ってくれると嬉しいわ。
先端材料開発では重要な役割を持つレアメタルだけど、産出にはやっぱり限界があるから、一方で、レアメタルを使わなくても同じ機能がでるような、代替元素の探索が進められているのよ。また使い終わった材料からの元素の回収にも力が入れられているわ。使用済み携帯電話をリサイクルして、金、銀、銅やパラジウムを回収する話は有名よね。
私たちの安全で快適な生活を維持しつつ、元素が枯渇しないような「持続可能な社会」を作るために、これからも化学の役割は大きいわね。

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カテゴリ 化学講座, 環境科学講座, 生物講座

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