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04月02日
2008年
posted by 松田 七美男 at 9:45 AM
「いきなりですが,皆さん数学は得意ですか?」

「えー,数学をやらなくていいと思って生物を志望したんですけど.」

「うーん.数学が嫌いなのは判るけど,文系の経済学や心理学でも何か定量的な議論をする場面では,数値や数式が必要だから,皆無という訳にはいきませんよ.」



「エクセルとかできます.でも,微積分とかはどうも苦手で…」

「おー,まさにその微積分が重要だということを,今回は話そうと思ってたのですよ.」

「あー,無理! それじゃ次回ということで,お疲れさまでしたぁ.」

「ちょっと待って,ここで難しい数式は使わないから,お話だけだから,少しだけ我慢して聞いて,ねっ」

「本当に少しだけですよー.バイトもあるし」

「約束します.ではさっそく.地球環境問題では平均気温の上昇が良く話題になっているよね.この現象が二酸化炭素の排出量の増加に起因していて,このままでは北極の氷が融けて大変なことになると.皆さんは,本当に異常に上昇していると思いますか」

「ニュースなんかではそのように報道されてますから,そうだと思いますけど」

「ここ数10年の間ではそうかもしれないけど,100年1000年の長さで考えるとそうでもないということを主張している学者もいますが,どう思いますか?」

「それは推測なんじゃないですか.根拠あるのかな.きっと,二酸化炭素の排出規制に反対するために考え出した理論じゃないですか」

「鋭いね.確かに1000年前には気温の測定なんかされてなかった訳で,考古学や地質学の資料から気温が高い時期があったに違いないと結論しているに過ぎないかもしれません.しかし,まるっきり嘘ではないことは理解できると思います.」

「全く否定はしませんが.どちらかというとやっぱり,この平均気温の上昇は異常であり,手遅れにならないように環境問題として取り組むという意見に同調します.」

「まあ,『現在の気温上昇は,長いスパンでみた場合に,地球の気温変動内におさまっている』主張は,なかなか納得できないし,手遅れになってからでは遅いから,早めに対策を考えるというのは現実的な対応だね.」

「あのー,微分の話は?」

「うん,気温の変動は値として何℃離れているかというのも大切だけれど, 変動率すなわち『気温の時間に関する微分』も考える必要があります.気温が100年かかって5 度上がった場合には,変動率が0.05度/年であることは計算できますよね.この位の数学はいいでしょう.1年に0.5度上がったとすると,たった0.5度ですが,変動率は0.5/年ですから,さっきの10倍も変化したことになります.このように,時間でわった変動率,すなわち微分という考え方は,状態が変化していく現象を考える上で根本的に重要なものなのです.変動率が大きいと少なくとも状態の変化が速いということは結論できますよね.」

「なんだ,そんなの当り前の話じゃないですか.微分なんていうから逃げたくなるんです.」

「おっ,いいね.じゃあ,ひと月に0.1度上がったら変動率はいくらかな?」

「うんと,1年は12ヵ月だから1月は1/12年で,先生割り切れません!

「割り切れなくてもいいです.0.1度を1/12年で割って,1.2度/年ですね.」

「うぁ,大きい」

「そう,0.1ずつ1年間上がり続けたらそうなりますが,現実にそうなるかは判らないですね.さらに短い時間で観察すると,もっと大きな変動率が計算上はでてくるかもしれません」

短い時間で計算するのはあまり意味がない気がします

「それっ,それを言いたかったのです.地球の歴史にとって100年内の変動率は本当に意味があるものなのでしょうか」

「なんか誤魔化されている気がします.だって,変動率が大きいままならばやはり大変なことになるじゃないですか」

「そうです.結局,変化率や変化の大きさだけを取り出してを議論するだけでは,なかなか判断がつかないのです.なぜ変化するのか,変化の原因をつきとめないと堂々めぐりですね.そこで,オホン,『変化とその原因の関係は,微分方程式という形式で表す』ことができます.おや,また逃げたくなりましたね.しかし,微分を考慮したモデル化を抜きに科学的な根拠のある議論はできそうもないことだけはなんとなく判ってもらえましたか?」

「ええ,まあそれなり.でも数式はやっぱり嫌です.」

「そうですか,その数式アレルギーをなんとか治療したいけど,今日はここまでとしましょう.」

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