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05月25日
2008年
posted by 石丸 臣一 at 2:35 PM
「ところで質問があるんですけど・・・」

「ん?なんだい?」

「先生の専門分野は何なんですか?前回は「環境科学とは」っていうものすごく広いお話しだったんで、今回は先生の専門に関係するお話しを聞いてみたいなぁと思ったんですけど。」



「そうか。私の専門はね、細かく見るといろいろあるんだけど大まかに分類しちゃうと無機材料化学っていう分野になるんだよ。じゃあ、最近問題になっている森林破壊について考えてみようか。」

「え?それのどこに無機化学が関係するんですか?」

「生物とか有機化学だったらわかるんですけど。」

「うん。植物の生育にはね、土壌の主要成分である粘土鉱物が深い関わりを持っているんだ。粘土鉱物は無機化合物の一つで私の研究材料でもあるんだよ。」

「へぇ・・・」

「なんだか、あまり納得できてないみたいだね(笑)君たちは粘土って言うと何を思い浮かべるかな?」

「えーと、幼稚園や小学校で工作の時間に使った粘土かな。」

「そうだね。あれは粘土が乾燥してしまわないように油を加えて練った油粘土っていうんだよ。あれも粘土の使い道の一つではあるけれど、粘土そのものは地球上のどこにでもあるものなんだ。土壌の中の最も粒子の細かいものを粘土っていうんだよ。その粘土を構成している主要な成分が粘土鉱物って言うんだ。」

「うーん、『粘土』と『粘土鉱物』の違いがよくわからないんですけど・・・」

「粘土は微細な土壌粒子でできたもので、水と一緒になるとどろどろになってしまう成分一般を指す言葉、一方、鉱物というのは土壌や岩石を形成している一定の化学組成をもつ化合物のことなんだ。」

「と言うことは、粘土は混合物、粘土鉱物は純物質っていうことになるんですか?」

「そのとおり!」
「さて、それじゃ粘土鉱物と植物の関係についてなんだけど・・・」

「あ、やっと本題ですね!」

「ああ(苦笑)。君たち、植物が生きていくのに必要なものは何かな?」

「えーと、水と光と、それからー・・・」

「二酸化炭素と、あと栄養?」

「えー、光合成するのに栄養なんか必要ないんじゃないの?」

「だって、肥料まかないといけないじゃない。それに、窒素・リン酸・カリって三大栄養素とか言うんじゃなかったっけ?」

「そうそう、それそれ。光合成をする植物の場合は光と二酸化炭素は確かに必要だけど、光は陽のあたるところなら存在するわけだし、二酸化炭素も空気中にあるものだから今は考える必要はないね。君たちの挙げてくれたもののなかで特に粘土鉱物と関係があるのは水とカリ、つまりカリウムなんだ。」

「粘土鉱物というのは、1ナノメートル(1ミリメートルの100万分の1)というとても薄い層が何枚も重なった構造を持っていて、この層と層の間にカリウムや、他にも植物に必要なカルシウムやマグネシウムなんかも含んでるんだ。さらに、この層の間には水をたくさん吸収できるから、一度雨が降ると水を吸って貯え、その後しばらくは雨が降らなくても土壌がある程度の水分量を保ち続けられるようになっているんだよ。」

「そういえば、うちの母が園芸が好きでいろんな土を買ってくるんですけど、何か関係がありますか?」

「園芸用に使われている土の中ではバーミキュライトやモンモリロナイトという粘土鉱物が使われているよ。これらは特に保水性に優れているのでよく使われるんだ。バーミキュライトはそのままの名前でも売られているからお母さんに聞いてごらん。」
[注*] バーミキュライトは産地によって天然アスベストを含んでおり、取扱いには注意が必要です。

「なるほど、粘土があるおかげで植物が生育するのに都合の良い環境が保たれるわけですね。」

「そうなんだ。実はこのことが酸性雨と森林破壊の関係にも重要な関わりを持っているんだ。残念ながら今回はこれで時間が無くなってしまったね。次の機会には、続きを話そうかな。」


今回のお話しの続きは環境科学講座第九回に予定しています。
次回は環境科学講座第六回へ続く 



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