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10月24日
2008年
posted by 松田 七美男 at 9:30 AM
「お彼岸を過ぎて涼しくなって,勉強がはかどる季節になりました.そこで,皆さんの苦手な数学のお話の続きです」

「そこでって.数学の続きがまだあったんですか?」

「まだまだ続きますよー.前回は微分積分を用いた数理モデルが重要であるとだけ説明しましたが,今回はその具体的な内容を数式を用いて説明しましょう」



「数式でっか.そらあきまへん.ほな,さいなら!」

「ちょっと待って,難しい数式は使わないから,中学生レベルだから,少しだけ我慢して聞いて,ねっ」

「本当に少しだけですよー.宿題もあるし」

「今回は宿題ですか.約束します.ではさっそく.二酸化炭素ガスが地球を覆い温室効果により地表の平均温度が上昇しているという仮説が正しいものとしましょう.二酸化炭素の増加量と温度上昇の間にはどのような数学的関係があるのでしょうか?」

「そんな細かいこと判りませんが,比例関係があるのではないですか」

「正直で結構です.少なくとも二酸化炭素の量が増えれば温度も上がるという関係は間違いないですね.でももう少し定量的に議論できないでしょうか.温度上昇は難しいので,その前段階として,二酸化炭素に吸収される熱量 Q と二酸化炭素の量 M の間の関係はどうでしょう?」

「それは簡単なんじゃないですか.どう考えたって正比例でしょう.式で表せば,

[tex]Q=kM [/tex]     

ここに k は比例定数である.なんちゃって.」

「調子がでてきましたね.第一感は確かに正比例ですね.人間が直観できる関係は正比例くらいだし,微分も大雑把にいえば事象を正比例関係でとらえることにつきますから.」

「えっ,微分って正比例関係なんですか? もっとずっと複雑で,クニャクニャした曲線とかを問題にしていた気がするんですけど.」

「もっともな疑問です.しかし,それは全体として正比例ということと,部分的に正比例ということの違いなのです.微分とは,どんな場合でも,非常に狭い領域における二つの変化量の間の関係を正比例関係としてとらえ,その比例定数が微分係数である という考え方なのです.」

「はあ,哲学的ですね.でもなんとなく判る気がします.」

「ちょっと嫌悪感がなくなったところで,数式を用いるとしましょう.二つの微小な変化量として,二酸化炭酸の吸収熱量の元となる赤外線(赤外線が吸収されて熱になるということです)の強さIと伝わる距離xを考えましょう.狭い範囲では,この二つの変化量には正比例関係」

[tex]\Delta I = k \Delta x[/tex]

が成り立つと考えられます.」

「このくらいなら平気です.微分なんていうから逃げたくなるんです.」

「おっ,いいね.で問題はここからなのです.正比例関係の比例定数 k はどう表されるでしょう.」

「うーん…と,先生! いままでの流れからすると二酸化炭素の量 M の変化量とか関係するんじゃないですか.」

「うん,よく流れを読んでいるね.しかし,この場合は変化量ではなくそこに含まれる量そのものじゃないですか.ほら,色水の濃さを思い浮かべてください.変化量ではなく,色をつける物質の量そのものに比例するでしょう.

「なるほどそうですね.では,

[tex]\Delta I = M \Delta x[/tex]

ということですね.」

「だいたい合ってます.ただし, M はそこに含まれている量ということで単位体積あたりの量すなわち濃度 C とすべきでしょう.そうして,もう一つ重要な関係を見抜かなければなりません. 吸収される量は,そこを通過する赤外線の強さにも比例するはずです.2倍の強さの赤外線が通過すると,失われる量も2倍になるでしょう?.また失われるということは,強度の変化としてはマイナスですから,結局

[tex]\Delta I = -CI \Delta x[/tex]

となります.」

「ちょっと,イヤーな気分がぶり返してきましたが,まあ判ります.」

「そろそろ限界ですか.では最後の関係式から, I(x) とさらには二酸化炭素の総量 M の関係を導きだすのは次回ということにしましょう.ただ,強度の減少量=吸収熱量という関係は理解できますよね.また,濃度に体積をかければ総量Mとなることも明らかですね.」

「はい.」

「よかったー.では前回最後に述べた,『変化とその原因の関係は,微分方程式という形式で表す』ことができていることは理解できますか.」

「変化しているのは I と x ですが….微分方程式がさっぱりわかりません.」

「当然です,高校では勉強しませんから.とにかく最後の式は微分方程式と呼ばれるものに書き換えることができます.しかし,それは次回ということで今日はここまでとしましょう.」



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